名古屋地方裁判所 昭和63年(わ)1442号 判決 1988年11月10日
本店所在地
愛知県豊田市竜神町新生一三〇番地
有限会社市川熔接所
(右代表者代表取締役 市川鋼治)
本籍
愛知県豊田市竜神町新生一三〇番地
住居
右同
会社役員
市川鋼治
昭和一三年一月三〇日生
右の者らに対する各法人税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官田中良出席の上審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人有限会社市川熔接所を罰金一〇〇〇万円に、被告人市川鋼治を懲役一年にそれぞれ処する。
被告人市川鋼治に対し、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人有限会社市川熔接所(以下「被告会社」という。)は、愛知県豊田市竜神町新生一三〇番地に本店を置き、冷暖房設備工事を業とするもの、被告人市川鋼治は、被告人会社の代表取締役として、その業務全般を統括しているものであるが、被告人市川は、被告人会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、架空の外注工賃を計上するなどの方法により、所得の一部を秘匿した上
第一 昭和五九年三月一日から同六〇年二月二八日までの事業年度における被告人会社の実際所得金額が三〇五〇万五二三四円であり、これに対する法人税額が一二二一万八三〇〇円であるのに、同六〇年四月三〇日愛知県岡崎市明大寺本町一丁目四六番地所在の岡崎税務署において、同税務署長に対し、損失額が一〇三万五三四七円であり、納付すべき法人税額は零円である旨の虚偽過少の法人税確定申告書を提出し、被告人会社の右同事業年度における正規の法人税額一二二一万八三〇〇円を免れ
第二 同六〇年三月一日から同六一年二月二八日までの事業年度における被告人会社の実際の所得金額が四八六六万三五二六円であり、これに対する法人税額が二〇〇七万七九〇〇円であるのに、同六一年四月三〇日前記岡崎税務署において、同税務署長に対し、損失額が七七万三七三五円であり、納付すべき法人税額は零円である旨の虚偽過少の法人税確定申告書を提出し、被告人会社の右事業年度における正規の法人税額二〇〇七万七九〇〇円を免れ
第三 同六一年三月一日から同六二年二月二八日までの事業年度における被告人会社の実際の所得金額が一九八一万八八〇六円であり、これに対する法人税額が七五九万二一〇〇円であるのに、同六二年四月二八日前記岡崎税務署において、同税務署長に対し、損失額が二六七万七六四二円であり、納付すべき法人税額は零円である旨の虚偽過少の法人税確定申告書を提出し、被告人会社の右事業年度における正規の法人税額七五九万二一〇〇円を免れ
もって、いずれも不正の行為により法人税を免れたものである。
(証拠の標目)
判示の各事実について、被告人市川鋼治の当公判廷における供述のほか、記録中の証拠等関係カード(検察官請求分)に記載されている次の番号の各証拠
判示全部の事実について
甲の5、16から52
乙の1から15まで
判示第一の事実について
甲の2、6、7、11
判示第二の事実について
甲の3、8、9、12
判示第三の事実について
甲の4、10、13、14、15
(法令の適用)
被告人らの判示各所為は、各事業年度ごとに法人税法一五九条一項(被告人会社については、さらに同法一六四条一項)に該当するところ、被告人会社については情状にかんがみ同法一五九条二項を適用し、被告人市川については所定刑中懲役刑を選択することとし、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、被告人会社については同法四八条二項により合算した金額の範囲内において罰金一〇〇〇万円に、被告人市川については同法四七条本文、一〇条により犯情最も重いと認める判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内において懲役一年にそれぞれ処し、被告人市川に対し同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予することとする。
よって、主文のとおり判決する。
(裁判官 大山貞雄)